【医師が解説】子どもが嘘をつくのは悪いこと?― 発達と心理のサインを正しく理解しよう
この記事は医師による監修を含みます。
内容は一般的な医学・心理学の知見に基づいています。実際の子育てでは、お子さんの性格や発達段階に応じて柔軟に対応してください。
「なんで嘘をついたの?」――そう問いかけた瞬間、親としてショックを受けることがありますよね。
でも実は、“嘘をつく”という行動は、子どもの脳が発達してきた証でもあるのです。
この記事では、医学的・心理学的な観点から、子どもの嘘の理由と、親が取るべき対応をわかりやすく解説します。
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1. 子どもが嘘をつくのはいつから?
3〜4歳ごろから、脳の前頭前野が発達し、「心の理論(Theory of Mind)」が芽生えます。
これは、“相手の気持ちや考えを想像できる力”のこと。
この力が生まれると、「ママがこう思うだろうな」と相手を意識した言動――つまり“嘘をつく能力”が出てきます。
🧠 嘘をつける=社会性が育っている証拠。
実は「悪いこと」ではなく、思考の成長のサインなんです。

2. 嘘をつく理由は「悪意」ではなく「防衛」
多くの親が「なんで隠したの?」「なんでそんなこと言ったの?」と思う瞬間、
子ども本人は“守りたい気持ち”でいっぱいです。
- 叱られるのが怖い
- 親を悲しませたくない
- 空想と現実の境界があいまい
- 「いい子でいたい」という願い
つまり、嘘には「自己防衛」や「相手への配慮」が隠れているのです。
ストレスホルモンのコルチゾールは「失敗体験」で上昇します。
叱る回数を減らすだけでも、嘘をつく頻度は減る傾向があります。
3. 嘘を減らすための親の対応
「どうしてそんなこと言ったの?」と問い詰めるよりも、まずは子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。
- 🫶 事実よりも気持ちを聞く:「どうしてそう思ったの?」
- 🌿 “正直に話せてえらいね”で締める:話せたことを肯定する
- 🕊️ 感情を落ち着かせる時間を作る:すぐに叱らず、後で静かに話す
- 🏠 家庭に“話しやすい空気”を:普段から嘘をつかなくて済む環境づくりを
嘘を減らす最短の方法は、「本音を話しても安全だ」と子どもが感じること。
この“心理的安全性”が、親子関係の信頼を深めてくれます。
4. よくあるNG対応
悪気なくしてしまいがちな、避けたい声かけの例です。
- 「嘘ついたらもう信じないよ」――脅しは逆効果
- 「うそつき!」とレッテルを貼る――自己肯定感を下げる
- “嘘”だけを責めて、本音を聞かない
⚠️ 子どもは「信じてもらえない」と感じると、次から“隠す”方向に行動が変わります。
“嘘”の背景にある気持ちをくみ取ることが大切です。
5. 医学的まとめ
- 嘘は脳と心の発達の過程で自然に出てくる
- 叱るより「理解」することで、嘘は減っていく
- 嘘を「悪」とせず、気持ちを受け止めることで自己肯定感が育つ
“嘘をついた”という事実よりも、「なぜそう言ったのか」に目を向けてみてください。
きっとお子さんの心の成長が見えてくるはずです。
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参考文献
- Talwar, V., & Lee, K. (2008). Social and cognitive correlates of children’s lying behavior. *Child Development*, 79(4), 866–881.
- Lee, K. (2013). Little liars: Development of verbal deception in children. *Child Development Perspectives*, 7(2), 91–96.
- 熊谷恵子(2021)『子どものうそと成長』ミネルヴァ書房




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