【医師解説】インフルエンザ検査はなぜ痛い?唾液検査じゃダメな理由をやさしく説明します

防護服を着た医療従事者が子どもにインフルエンザの鼻咽頭検査を行っている様子。インフルエンザ検査が痛い理由を医師が解説する記事のアイキャッチ画像。 成長発達
インフルエンザ検査が「痛い」と感じやすい理由と、鼻咽頭検査が推奨されている背景を医師が解説します。

【医師解説】インフルエンザ検査はなぜ痛い?唾液検査じゃダメな理由をやさしく説明します

医療上の注意:本記事は一般的な医学情報です。年齢・基礎疾患・地域の流行状況・症状の強さによって判断は変わります。
つらそう/呼吸が苦しい/水分が取れない/意識がいつもと違う等があれば、自己判断せず医療機関に相談してください。

受診の判断に迷うときは、こちらも一緒に保存しておくと安心です:


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「インフルの検査って、なんであんなに痛いの…?」
「子どもが泣くのを見るのがつらい。できれば唾液でできないの?」
こう思うの、すごく自然です。むしろ“そう感じるのが普通”だと思います。

今日は、なぜ今も“鼻の奥を取る検査”が主流なのか、そしてなぜ市販の唾液検査だけで安心しきれないのかを、
医師の目線でできるだけやさしく、でもごまかさずに説明します。

結論:痛いのは「意地悪」ではなく、当てにいく場所が違うから

いきなり結論を言うと、インフルエンザの検査が“鼻の奥”になりやすいのは、そこがウイルスが増えやすく、検出しやすい場所だからです。
逆に言うと、浅いところ・材料が少ないところだと、どうしても「陰性(出ない)」が増えます。

なぜ「鼻の奥」を取るの?唾液じゃダメ?

インフルエンザは、発症直後〜初期にかけて、鼻やのどの奥(鼻咽頭など)にウイルスが多いことが多いです。だから医療現場では、
“ウイルスがいそうな場所から、ちゃんと材料を取る”という発想になります。

一方で唾液は、だれでも採れるし痛くないし、理想は「唾液で全部できたら最高」です。実際、研究レベルでは唾液を使った検査もたくさん検討されています。
ただ、現実には唾液はウイルス量が安定しないことがあり、とくに抗原検査(迅速検査)だと、条件によっては感度がかなり落ちる報告もあります。

つまり「唾液=絶対ダメ」ではなく、“唾液で同じ精度を安定して出すのが難しい場面がある”というのがポイントです。
だから今も、確実性を優先する場面では鼻の検体が選ばれやすいんですね。

感度・特異度ってなに?(ここだけ知ればOK)

医療者が検査を考えるときによく使うのが「感度」と「特異度」です。言葉が難しいので、ざっくりこう覚えてください。

感度は「本当にインフルの人を、陽性として拾える力」です。感度が低い検査だと、インフルなのに陰性になりやすく(偽陰性が増える)なります。
特異度は「インフルじゃない人を、陰性として正しく外せる力」です。特異度が高い検査は、陽性が出たときに“本当の陽性”である確率が上がります。

ここで大事なのは、“陰性=絶対ちがう”ではないことがある、という点です。特に感度が十分でない検査だと、流行期には陰性でもインフルを疑う場面が出ます。

インフル迅速検査(抗原検査)の感度・特異度はどのくらい?

一般的な迅速抗原検査(クリニックでよく行う「数分で出る検査」)は、報告や条件で幅がありますが、
CDCの解説では感度はおおよそ50〜70%程度、特異度はおおむね95〜99%程度とされています。

これを日常語にすると、「陽性が出たらかなり信じやすいけど、陰性でも“実はインフル”が混じることがある」という意味です。
だから医師は、検査結果だけでなく、流行状況・症状・発症からの時間もセットで見ています。

ちなみに、迅速検査でも製品や運用で成績は変わります。日本でよく使われる検査の中には、条件によって高い感度を示す報告もありますが、
すべての現場・すべての患者さんで同じように出るわけではありません。

PCR(核酸増幅検査)だとどう違う?

PCR(や迅速分子検査)は、抗原検査より感度・特異度が高いとされ、ガイドラインでも分子検査を優先する考え方が示されています。

ただし、PCRは「どこでもすぐできる」「すぐ結果が返る」とは限りません。費用・体制・検査時間の問題があって、
まずは迅速検査で判断する、という運用が残りやすいのが現状です。

「市販の唾液検査」ではダメ?— ここが誤解ポイント

ここ、いちばん誤解が生まれやすいところなので丁寧に言いますね。
唾液の検査は、“存在しない”わけではありません。研究では、唾液を使った分子検査(PCR系)で高い精度を示す報告もあります。

ただ、一般の家庭で買えるタイプの検査が、どの状況でも同じ精度を安定して出せるかというと、そこにはまだハードルがあります。
唾液は採り方・タイミング・食事や水分・個人差で「材料の質」がぶれやすく、抗原検査だと感度が落ちやすい条件が出ます。

だから、もし市販検査で陰性でも、症状や流行状況からインフルが強く疑わしいときは、
「検査が間違った可能性」を頭に置いたまま行動するのが安全です(再検・受診・自宅での過ごし方の調整など)。

検査は毎回必要?「検査しない」判断も実はあります

現場では、医師がいつも「検査しよう」と思っているわけではありません。たとえば、症状が軽くて経過観察でよさそうなとき、
逆に重症感が強くて検査結果を待たずに対応を急ぐとき、流行状況から臨床的にほぼインフルと考えられるときなど、
検査が“必須”にならない場面もあります。

もしつらい検査が心配なら、「今日は検査が必要ですか?」「検査しない場合は、どう判断しますか?」と聞いて大丈夫です。
その質問に、理由も含めて落ち着いて答えてくれる医師は、たぶん“良いコミュニケーションが取れる医師”です。

まとめ:つらい検査には理由がある。でも「納得して受ける」ことが大事

インフルの検査が痛いのは、あなたが悪いわけでも、子どもが弱いわけでもありません。
“当てにいく場所”が鼻の奥で、そこから十分な材料を取ろうとすると、どうしても不快感が出やすいだけです。

そして、迅速検査は便利ですが、感度には限界があります。だから医師は、結果だけでなく、流行状況や症状、発症からの時間も一緒に見て判断しています。
不安なときは、「検査の必要性」や「陰性の解釈」を遠慮なく聞いて大丈夫です。

このページは、つらい検査の前に思い出して落ち着くための“整理ノート”として、よければ保存しておいてくださいね。

参考文献

  1. CDC. Overview of Influenza Testing Methods(迅速抗原検査の感度50–70%、特異度>90%など).
  2. CDC. Information for Clinicians on Rapid Diagnostic Testing for Influenza(感度50–70%、特異度95–99%など).
  3. CDC. Rapid Influenza Diagnostic Tests(偽陰性が起こりうる点の解説).
  4. IDSA. Clinical Practice Guidelines for Seasonal Influenza(分子検査を優先する考え方、RT-PCRの位置づけ).
  5. Chartrand C, et al. Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2012(迅速検査の感度・特異度の総括).
  6. Yoon J, et al. The use of saliva specimens for detection of influenza A and B viruses with rapid influenza diagnostic tests. 2017(唾液検体の課題).

※検査性能(感度・特異度)は、製品・検体採取の方法・発症からの時間・流行状況によって変動します。最新の運用は医療機関の方針に従ってください。

免責:本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断・治療を指示するものではありません。
個別の症状や状況については、必ず医療機関にご相談ください。

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